近年では、健康意識の向上から企業として実施する健康診断を「より充実したものに変更したい」というお問い合わせが増えています。
今回のコラムでは、従業員の小さな声をきっかけに、健康診断のあり方を見直した企業の取り組みをご紹介します。
「時間がない」は言い訳ではなく、変化のチャンスだった——。
健康づくりを“つくる”現場のリアルな物語に、ぜひ触れてみてください。
◆従業員の小さな声が、現場を動かした
「もっとちゃんと見てもらえる健診って、できないんですか?」
その一言が、職場の健診内容を見直す大きなきっかけになりました。
従来はバスによる法定健診だけが実施されていました。
形式的な項目は網羅されていても、胃がんや大腸がんといった、がん検診は含まれていません。
従業員たちもそれを「仕方がない」と受け入れていましたが、本音では不安を抱えていたのです。
その声をすくい上げたのは、新たに配属された德田工場長でした。

以前の職場では健診内容が充実しており、「ここでも、もっとできることがあるのではないか」と感じたといいます。
長年同じ環境にいると、それが“当たり前”になり、見直す機会を失いがちです。だからこそ、何気ない一言や外部の視点が、大きな変革の呼び水となるのです。
◆「段取りも仕事のうち」—時間は“つくる”もの
健診内容の見直しにおいて最大のハードルは、「時間がない」という現場の事情でした。
繁忙期には機械を止める余裕などなく、少しの隙間も生産に影響します。
これまで多くの職場が、「理想だけど現実的ではない」として、改善を見送ってきました。
しかし、この現場では「時間はないものではなく、つくるものだ」という考え方が共有されました。
工程の見直し、スケジュールの調整、作業の分担——工夫と段取りで乗り越える努力が重ねられました。

德田工場長は語ります。
「正直、面倒くさいと思いましたよ。でも、それより大事なことがあるって気づいたんです。段取りするのも仕事のうち。それができるかどうかが、組織の力なんです」
健診に時間を“使う”のではなく、“投資する”という発想の転換。これが、現場の空気を変え、社員の意識を変えるきっかけとなりました。
◆健診で守れるものがある—早期発見の現実
健診内容のグレードアップによって最も期待されているのが、がんの早期発見です。
実際に德田工場長は、前任地での経験からその重要性を実感しています。
「健診でがんが早期に見つかって、今も元気に働いてくれている社員がいます。あのとき見つかっていなければ、きっと今ここにはいなかったでしょう」

がんは自覚症状がないまま進行することが多く、早期に見つけることができるかどうかで、その後の人生が大きく変わります。
定期健診が「命を守る」だけでなく、「働き続けることを支える」手段であることは、まさにこの事例が証明しています。
そして、その従業員の姿を見て、周囲の健康意識も自然と高まっていくのです。
「自分も健診、ちゃんと受けようと思った」「会社がここまでやってくれるのはありがたい」
——そんな声が現場から聞こえてくるような気がします。
◆病気も待ってくれない時代に、企業ができること
仕事は待ってくれません。しかし、病気もまた待ってはくれません。
だからこそ、健康を「後回しにしない」仕組みを会社が用意することは、これからの時代における企業の責任であり、従業員への誠意でもあります。
健診を「やらされるもの」から「守られていると感じるもの」へ。
そして、「時間がない」から「時間をつくる」へ。
今回の取り組みは、工程の改善にとどまらず、職場の文化や意識そのものを変えるきっかけとなりました。
“誰かの声に気付き、行動に移す”。そんな一歩が、企業の未来と従業員の人生を支えていくのです。
■インタビュー協力企業様■

共栄株式会社 衣浦工場
1927年に創業
兵庫県神戸市に本社を置き、金属を中心としたリサイクル事業を展開し、資源循環型社会の実現に貢献されています
◆健康診断のご相談を受け付けております
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